#6「年末に考えたい ”北海道そうせい2018”」
きのうのような「道北大荒れ」のニュースを、内地(北海道方言)では
”これが同じ日本か” と思って見ている人もいるでしょうね。
年内最後となるブログは、いつもより早く更新しました。
ちょっと固い内容ですが、北海道の大事なことだと思うので、お付き合いいただければ…
私は、北海道にとって2018年は二つの意味で「特別な年」になるのではないかと感じています。
一つは「北海道150年」。事業のテーマは3つ設定されています。
◇北海道151年目の新たな一歩を踏み出す
◇先人から受け継いだ財産を次の世代につなぐ
◇”Hokkaido“の多様な魅力を世界に広げる
「特別な年」になるのではないか、その二は「北海道150年」に
水を差すことにもなりかねない「JR北海道の路線問題」です。
以下12月7日の道新から
今月6日「JR北海道再生推進会議」の有志が、対象路線の存廃などを1年以内に示すよう
期限を突きつける声明を出しました。期限を切った理由について委員の一人は
“もう見ちゃいられないということ”と述べました。
また、会議のメンバーは通常の会議では主催するJRから旅費などが支給されますが、
この日は旅費を自己負担して来道しました。会議の議長、宮原耕治日本郵船相談役は
「この問題はゆっくりできないということに尽きる」との思いからだと。(引用終わり)
知事や自治体関係者、JRの反応は様々だったようですが…
これは去年、北海道広告業協会が掲載したものです。
北海道の中には、新潟県や東京、大阪など、なんと合わせて15の都府県がすっぽり入るんです。
JR北海道の現在の路線図です。14路線2552㎞あります。(黄色はバス路線)
去年の11月18日、JR北海道は「将来的に当社単独では維持することができない線区」を
発表しました。10路線13線区、距離にして1237㎞。2552㎞の営業路線全体の約半分です。
こちらはJRが将来的に単独で維持可能だとしている線区です。
(去年11月18日の発表のため、12月に廃線が決まった留萌~増毛が残っています)
何を言いたいかというと、最初に見ていただいた広告でわかるとおり、
こんなに広い北海道から、半分にあたる路線がもしなくなったら、どうなるか。
「北海道150年」のテーマをもう一度見ると
◇北海道151年目の新たな一歩を踏み出す
◇先人から受け継いだ財産を次の世代につなぐ
◇”Hokkaido“の多様な魅力を世界に広げる
“151年目の新たな一歩”は、「後ろ向きな一歩」になるかもしれません。
“財産を次の世代につなぐ” と“多様な魅力を世界に広げる”には、水を差すどころか「真逆の道」。
いわば「その先の、道へ。北海道」は、「試される大地 北海道」へ逆戻りです。
JR北海道の路線問題について、私はこのブログで存廃の是非を云々するつもりはありません。
ただ、あるフォーラムに出席して初めて知った事実があったので、
共有の意味で、触れさせていただきたいと思った次第です。今月1日に旭川で行われた
「道北・道東の魅力あるまちづくりフォーラム~公共交通の役割~地域振興と鉄道」
通常JRの利用は、通勤(ビジネス)・通学・通院・買い物・観光、
そして物流(貨物)が挙げられます。どれも重要ですが、今回共有したいと思ったのは医療です。
「公共交通と地域医療の在り方について」
名寄市立総合病院の和泉裕一院長の「医師の出張派遣」の話を聞いて
医療現場のあまりの過酷さ、それも北海道特有の事情に、愕然としました。
今のような冬の季節でも、当直勤務を終えた医師が当直明けに
そのまま自分で車を運転して派遣先に行くことが多いというのです。
JRなど公共交通機関の運行時刻や本数の関係で、出張派遣に利用できないことが多いそうです。
医師がいない、もしくは少ない自治体にとって、医師が出張して診察・治療してくれる、
いわゆる「広域医療」は現在、ましてや将来的にもなくてはならない事業です。
枝幸町、音威子府村、中川町、下川町、和寒町、それ以外にも天塩町や稚内、
留萌へ派遣することもあるそうです。
当直明けの移動、JRやバスなら出張先まで心身を多少は休めることができますが、
凍結した道路やホワイトアウトの中、往復自分で運転しなければならないとなると、まさに命懸けです。
名寄市立総合病院の「地域医療連携室」に詳しいデータを聞きました。
平成28年度は712。これは何の数かといいますと「医師派遣の日数」です。
統計は派遣した回数や人数ではなく、日数で出すのだそうです。
つまり、1日2~3人を派遣することがあるため、712日という数字になるわけです。
さらに医師だけでなくリハビリを担当する理学療法士も、200日派遣された、とのことでした。
住民の健康を守る医師の「命」を守ることは、まさしく公共交通の責務ではないのか、と思うのですが…
いかがでしょうか。 もう一度、先ほどの新聞広告を見て下さい。
ある医師が出張派遣で、例えば真冬に名寄と稚内を往復するということは、
新潟県の端から端までを走るのとほぼ同じ、と言えるわけです。
こうした非常に過酷なことが、人口当たりの医師数が多い旭川や札幌など以外、
道内では当たり前のように行われているのが実態なのではないでしょうか。
「医療」のくくりで言うと、北海道には179の市町村がありますが、
そのうち149の市町村には、出産できる医療機関がありません。本来、これも異常です。
つまり北海道は、”命を守るための” そして ”生きていく上”での「避けられない長距離移動」という
他府県とは明らかに異なる事情を抱えているわけです。
JR北海道の問題をめぐっては、各沿線で積極的な協議も行われていますが、私は関係者の方々に
こうした実態と、以下の実情などを材料に、議論をお願いしたいと思っています。
◆JR北海道の100%株主である国は、自分の会社の問題に
なぜ、他人事のような顔をしているのか。(来年度の北海道開発予算を見て=後述します)
◆国が「地方創生」で北海道に求める、観光・インバウンド戦略・農水産物の輸出増等に
丸っきり逆行すること。
◆「モーダルシフト」への逆行
「モーダルシフト」とは、人出不足が顕著な物流で、トラックから大量輸送機関である
鉄道貨物または海運に転換すること。この転換によって『CO2による環境への負荷軽減』と
『ドライバー不足』の問題に対処する。
民間ではすでに、ライバル企業同士が「モーダルシフト」を進めていること。
ちなみに日本で消費されるタマネギは年間100万~120万トン。そのうち北海道産は60万トン。
40万トンを産する北見からは「タマネギ列車」で旭川を経て本州へと運ばれている。
食料基地北海道からの農産物輸送を、もし貨物列車からトラックに切り替えるとしたら、
いったい何百人、何千人のドライバー雇用問題が発生するか。
◆麻生財務大臣 2017.2.28参院予算委員会での発言
「北海道の努力が足りないじゃないか」と分かったことを書いてる新聞記者はいっぱいいるけど、
経営やったことがないのが書いてますからね」とした上で、
「JR北海道とJR東日本との合併。これ一つのアイディア」
◆西田昌司参院議員 2016.10.13参院予算委員会での発言
「安倍内閣が一番目指しておられるいわゆる地方創生、一億総活躍。
そのためには地方を活性化させなきゃならない(中略)。
これを解決するためには国鉄の私は、もう一度再編、再統合をやるべきだと
30年たって分かってきたのは、結局七社の格差が非常に大きくなってしまった。
格差が大きくなっただけじゃなくて、要するに、七社がばらばらの会社になっていますから、
JRグループといっても全くダイヤのこの協調性がない。
一緒に自分たちがやろうという話になっていないんですよ。
これでは国民にとって何のための改革だったのかということになります。
そこで、私が是非提案したいのは、JR株を今もう一度買い戻すんです。
そんなことできるのかといいますと、できるんですよ・・・
(案の具体的な内容・財源措置などを知りたい方は、同日の国会議事録をお読み下さい)
西田議員が言っているのは、JRのホールディングス化です。
税理士でもある西田議員は今年8月、北海道税理士会旭川支部の研修会で
この案を政府に提案すると言及したということです。
JR北海道の問題で、最近の新聞記事を二つ引用させていただきます。
◆道新の12月21日「回顧2017」⑧
住民意識の高まり課題 議論内容見えず
根室線の沿線市町村などでつくる「根室本線対策協議会」は、
計6回の会合の会場を加盟自治体で持ち回りした。移動は必ずJRを使った。
能登芳昭・富良野市長は「道内全体の交通体系をどうするべきか、
道の姿勢を明確にすることが重要」と指摘する。路線ごとに個別の結論づけをすると
「道内が一本の矢になれない」(能登市長)ためだ。こうした考えから、
結論めいた考えが一人歩きしないよう経費節減策などを話し合う会議は全て非公開で進められた。
ただ、こうしたことで逆に住民側からは、議論の内容が見えなくなってしまった。
具体的な住民運動などにつながっておらず、危機感の薄さは否めない。
◆12月24日 道新「オピニオン」
2018年度の政府予算案で、北海道開発予算の総額は5550億円となった。
17年度当初予算に比べ1.6%の微増ながら6年連続で増加した(中略)
道内では今、JR北海道の路線網をどう維持するかが大きな問題になっているが、
開発予算に鉄道関連事業は全く見当たらない(中略)
おかしいのではないか。
JRは道民の足としてだけでなく、農産物の輸送や観光客の移動でも大きな役割を果たしている。
開発予算で重点施策に位置づける「食と観光」の振興にとって、不可欠な社会基盤といえる。
(引用終わり)
平成30年度北海道開発予算
このブログの#1で私は、石破茂 元地方創生担当大臣の話を載せました。
今年4月、元地方創生大臣の石破茂さんを取材した際、
石破さんは、いま最も危惧していることとして次のように話しました。
「いまの政治ってのは、永田町と霞が関とメディア、この3者で完結してしまっている…」。
石破さんが言いたいことは、党や国会でまっとうな議論がない。メディアは自主規制。
国会が死んでいる状況では、地方自治体が束になってでも本気度を示さなければ
「地方創生」はお飾りにすぎなくなる。
石破さんが言う「束になっての本気度」、そして能登富良野市長が言う「道内一本の矢」。
大変僭越ですが以下、私の”北海道そうせい2018”への提案です。
道内179自治体の首長さん全員が、来年の通常国会の予算委員会で
JR問題が取り上げられる日に国会へ出向き、陳情ではなく審議を傍聴する。
「北海道の本気度」と「一本の矢」を、見せつけに行きませんか。
いかがでしょうか。
「日本のてっぺん きた北海道」。わが道北に是非、軸になっていただきたいと思います。
最後に…
先ほど私は「関係者の方々に…」と記しましたが、実はここが一番重要だと思うのですが、
自分も「関係者」であるという意識を、来年は道民の多くが持たなければいけませんね。
北海道150年を「特別な年」にするために。
みなさん、よいお年を。
来年も、どうぞよろしくお願いいたします。
投稿日: 2017年12月27日カテゴリー: けんぶちックな地方そうせい